ガンダム Gのレコンギスタ
R.C.1014年。所属不明の謎のMSが宇宙よりキャピタル・テリトリィに降下して来た。それを正式発足直前のキャピタル・アーミィ(以下「アーミィ」と略す)のMS隊と海賊部隊のMS隊は確保を巡って競り合った。謎のMSは海賊部隊が、脱出したパイロットの少女はアーミィが確保した。MSは海賊部隊に「G-セルフ」と名づけられ、記憶を失っていたパイロットの少女はアーミィに「ラライヤ・マンディ」と仮の名を与えられた。
1週間後、ベルリ・ゼナム等キャピタル・ガードの候補生達は、軌道エレベータでの宇宙実習中に突然、海賊部隊が操縦する「G-セルフ」の襲撃を受ける。エレベータにはラライヤも同乗していたが、何故かG-セルフを見て取り乱す。作業用MSレクテンで応戦したベルリ等は巧みな操縦と連携でG-セルフの鹵獲に成功する。G-セルフのパイロットはアイーダ・レイハントンと名乗る少女だった。ベルリは彼女に不思議な感覚を覚える。そして海賊部隊では唯一アイーダしか認証しなかったG-セルフは、何故かベルリを認証し「Gメタル」を発行、パイロットと認識してしまう。
ラライヤはベルリの友達のチアリーダーであるノレド・ナグが通う「セントフラワー学園」に編入された。ベルリは国賓歓迎式典の警護に借り出されたが、最中に海賊部隊のカーヒル・セイント率いるMS部隊がアイーダとG-セルフ奪還のため、テリトリィを襲った。ベルリは幽閉されているアイーダを助け出そうと、先輩ルイン・リーと共に救出に走る。ラライヤを連れたノレドとルインのガールフレンドマニィ・アンバサダも後を追う。ベルリはアイーダをなんとか救出したが、キャピタル・ガードの指示でG-セルフへ搭乗させられ、直後にカーヒルの激しい攻撃を受ける。同乗しているアイーダを守ろうと応戦したベルリは、カーヒル機のコクピットを撃ち抜いてしまう。カーヒルはアイーダの想い人だった。アイーダはベルリにカーヒルを返せと訴える。キャピタル・ガード調査部のクンパ・ルシータが現れ、アイーダとラライヤの身柄を確保し、G-セルフも接収した。
翌朝、海賊部隊所属のクリム・ニックはMSモンテーロ単機で再度アイーダ救出の奇襲をかける。クンパの計らいでG-セルフに触れる機会を得たアイーダはベルリ、ラライヤ、ノレドを乗せたままG-セルフを発進させる。ガードの教官でアーミィの一員でもあるデレンセン・サマターがMSカットシーで迎撃したが、アイーダはクリムと合流するや、戦闘を避け撤退するよう指示し、ベルリ達を乗せたまま、G-セルフとモンテーロはカリブ海の海賊部隊の基地へと帰還する。
アイーダは海賊部隊で姫と呼ばれる特別な存在だった。同部隊の戦艦メガファウナ艦長のドニエル・トスはアイーダが連れ帰った人質3名を尋問するが処遇に窮した。クリムは好奇心からベルリにG-セルフを操縦させ、ベルリは指示通り動かしてみせる。そこへ正式発足したアーミィのカットシーの編隊がベルリ等人質の解放を求めて飛来した。ベルリはカーヒルを殺したせめてもの償い代わりに艦は守るとアイーダへ宣言し、G-セルフで飛び出す。海賊部隊はノレドとラライヤを人質として担保しベルリを送り出す。ベルリは交渉を求めてカットシーへ接近したが、クリムの介入により会話は果たせず、防戦戦闘を強いられる。3機のカットシーの攻撃に囲まれ窮地に陥ったベルリが「スコード!」と祈りの言葉を叫ぶと首に掛けていたGメタルが共鳴、G-セルフに搭載された特定の者を護るための自動防衛機能が働き、機体の表面からフォトン・シールドを発生させ、周囲の敵MSのビーム・サーベルのビーム刃を押し退け、ビーム・ライフルを歪曲させた。想定外の反撃にカットシーを率いていたデレンセンは撤退を指示した。
メガファウナは本国からの軍令で艦隊作戦のための陽動行動を開始し、宇宙に上がろうとする。アーミィの謎の人物マスクは新型可変MSエルフ・ブルックの一号機とカットシー6機を率いてメガファウナを追う。ベルリはエルフ・ブルックの攻撃で窮地に陥ったモンテーロをコア・ファイターの「水の玉」で救い、更にG-セルフにドッキング後、ビームサーベルでアーミィ部隊を撃退する。ドニエルはアイーダにベルリの働きを褒めるよう諫言する。アイーダは葛藤を隠して責務を果たす。
ベルリはノレドにも促され、脱走も視野に入れていたが、弾道飛行中の高高度での作戦中にベルリ奪還の任を帯びたデレンセンの乗るMSエルフ・ブルの襲撃を受ける。新装備「リフレクターパック」を装備し、機体色も変わっていたG-セルフを、デレンセンは海賊が運用しているものと確信して執拗に攻撃を続ける。ベルリは加勢に来てくれたクリムを救おうと反撃した結果エルフ・ブルを撃墜する。皮肉にもその決着の瞬間に、両者は互いにキャピタルガード養成学校での師弟だと気付いてしまう。ベルリは苦悶する。
ベルリの母で軌道エレベータの運行長官であるウィルミット・ゼナムは禁忌を破ったかのような武装強化を行っていくアーミィと、息子の「救出」がその口実として利用されていることに苛立っていた。ウィルミットは一計を案じ、設備視察中事故を装い単身大気圏グライダーでメガファウナへと向かう。メガファウナではクリムがラライヤにG-セルフを操縦させ、能力を確認していたが、そこをマスクが率いるエルフ・ブルック編隊が襲った。ベルリはラライヤと交代し迎撃したが苦戦した。アメリアの可変MAアーマーザガンが本国から到着し窮地を救う。アメリア軍の長でアイーダの父親でもあるグシオン・スルガンも救援部隊に帯同して到着した。グシオンはベルリに搬送してきた「トリッキーパック」を使うよう指示する。ベルリは不慣れなパックに苦労しつつも活用しマスク部隊を撃退する。一方アイーダはレーダーに映った高高度から接近する未確認機の迎撃に向かっていた。その「未確認機」はウィルミットの操縦するグライダーだった。後から追いついたG-セルフがグライダーを受け止め、母子は再会を果たす。ウィルミットはグシオンに対し、世界を騙しメガファウナを運用して宇宙技術を蓄積・開発してきた事を非難したが、グシオンは月の写真を見せ、周辺の小天体の動きが活発であること、「宇宙からの脅威」の可能性を示唆し、備えが必要であると主張した。マスクは戦艦ガランデンへ帰投し、同艦の補充兵となったマニィと遭遇する。マニィはマスクの正体はルインだと気付く。
クリムは別任務のためアーマーザガンで本国へ戻った。ベルリとウィルミットはもし宇宙からの脅威が事実ならば、キャピタルは協力して対応する必要があると認識し、メガファウナをキャピタルに迎えると提案する。グシオンはその提案を受ける。ウィルミットはキャピタル・ガードへ連絡し、護衛誘導を要請する。途上でノレドはベルリがウィルミットの実子ではないことをアイーダに教える。アーミィのマスク部隊の奇襲を退けた後、キャピタル・ガードのケルベス・ヨー等がメガファウナに合流、その誘導で無事テリトリィ近傍に到着する。ゼナム親子とスルガン親子、ノレド、ラライヤの6名はキャピタルに入国し、スコード教のゲル法皇に謁見、法皇に宇宙からの脅威や宇宙に住む人の存在について質問する。法皇は宇宙に住む人の存在を肯定する。グシオンはまた宇宙とキャピタル・タワーとにエネルギー供給が一手独占されている現状は悪で、その開放が必要だと意見するが、法皇はその考え自体が脅威であると返す。そこにクンパが到着する。グシオンは過去の国際会議で月の裏側のスペースコロニー「トワサンガ」が公然となったことを語るが、クンパはそれを方便に禁忌破りの宇宙艦隊でエレベータの終点地の聖地ザンクト・ポルトを占拠するというアメリアの目的を言い当てて去る。ケルベスがベルリとアイーダを呼び戻しに来た。ラライヤがそれを追いかけノレドも追う。メガファウナがアーミィに発見されたのだ。アーミィの新型MS「ウーシァ」3機とカットシー隊がメガファウナへ迫りG-セルフ、ベルリ、ラライヤの引き渡しを要求する。アイーダのG-アルケインやガードのMSレックスノー隊が防戦に当たる。G-セルフはケルベスがアーミィから調達した「高トルクパック」を装着した。アルケインはベッカー・シャダムのウーシァに襲われピンチに陥る。ベルリは恋を自覚、バックパックを囮とした戦術でアイーダを救出・ウーシァ隊を無力化しメガファウナへと帰投する。
法皇は考えがあるとウィルミット、グシオンとの会談を続ける。グシオンは会談後、アメリアで計画していたキャピタルタワー占拠計画は最早不用になったと判断、至急本国に戻り正式中止したいと言う。ウィルミットは、グシオンにエレベータと大気圏グライダーの最速の足の提供を申し出る。法皇はザンクト・ポルトへ急行すると表明。ウィルミットは帯同を決意、グシオンも後から追うことにした。3名はその日の最終便で宇宙へ向かう。クンパとマスクもそれを追うかのように乗りこんだ。メガファウナもガードのケルベス等を乗せ、テリトリィを脱出し宇宙へと向かう。アメリア艦隊からの襲撃に備えアーミィのガランデンも飛び立った。
グシオンがアメリアへ帰着する前に、アメリア大統領ズッキーニ・ニッキーニが強権を発動し、キャピタルタワー占拠作戦が発動されてしまう。2隻の先行艦サラマンドラとガビアルのMS大隊は大尉に昇進したクリムが率いていた。帰り着いたグシオンは大統領に即時中止を具申するが、却下される。グシオンは諦めて後続の主力艦隊の指揮を執るが、戦術上の理由を作り進路をザンクト・ポルトへ変更してしまう。サラマンドラとガビアルは当初計画どおりアンダーナットへの攻撃を開始する。アンダーナットからはアーミィが応戦。追うメガファウナとガランデンもサラマンドラ隊の阻止を試みる。ガランデンから発進したマスクの新型MSマックナイフ隊はサラマンドラへ牽制を行った後、本来の命令であるG-セルフとラライヤの奪還作戦を試みる。ケルベスの乗るレックスノーを拉致し、メガファウナにG-セルフとラライヤへの人質交換を求めた。マスクに誘い出され、ベルリとマスクは初めて宇宙服で直接対峙するが、その間にケルベスは自力脱出、ベルリもG-セルフへと逃れ、マスクの作戦は失敗する。一方サラマンドラもアンダーナットとガランデンからの攻撃を捌ききれず、周回軌道航行の時間制約によりアンダーナットの占拠は失敗する。
クリムはキャピタルタワーの救助規定に目を着け、ガビアルを難破船に擬装しザンクト・ポルトに兵を送り込み占領する計画を立案する。マスクのMS隊はサラマンドラの撃沈を目指し、フォトン・アイを装備した誘導弾で攻撃したが、「アサルトパック」を装備したG-セルフの長距離狙撃に阻まれる。クリムの作戦は奏功しザンクト・ポルトはアメリア軍に占領される。グシオンも到着した。メガファウナは144番ナットへ向かい、アイーダ、ベルリ、ラライヤ、ノレドの4名でザンクト・ポルトに先行偵察へ向かった。ザンクト・ポルトの聖堂にはゲル法皇、ウィルミット、クンパ、グシオン、クリムが揃っていた。クリムは法皇にタワーの管理をアメリアに委譲しろと迫る。アイーダ等も追いついた。その時ザンクト・ポルト上空のガビアルが何者かに撃沈された。月方向より所属不明の艦隊がMSを多数発進させ迫ってきたのだ。
謎の艦隊はノウトゥ・ドレット将軍の率いるトワサンガの強硬派勢力「ドレット軍」だった。アメリア軍は迎撃態勢に入る。ガランデンのアーミィはアメリアに共同戦線を張ろうと呼びかける。ベルリ、ノレド、ラライヤ、アイーダ、ケルベス、ルアンはガランデンに寄り、ベルリとノレドはマニィと久々に再会する。トワサンガ艦隊から交渉団の小艇がザンクト・ポルトへ向かい始めたが、クリムは投降に見せかけてトワサンガ艦隊旗艦を奇襲する作戦を立案・実行する。ミック、マスク、マスクの副官バララ、ベルリ、ルアン等が参加するが、怪しまれて失敗、撤退する。
交渉団は聖堂に到着し、トワサンガ軍は地球上の大陸間戦争の状況を鑑みて組織したもの。地球再建の為にはトワサンガ艦隊の港も必要。タワー侵略の意図はない。地球に禁制の技術を流布した亡命者の名簿を地球側でまとめて提出して欲しいと伝えてきた。アイーダはトワサンガの現状を自身らの目で直接確認すべきだと、ベルリらとトワサンガへ向かうことを決意する。
交渉団は聖堂でグシオン、ウィルミットとの会議を行い、トワサンガ政府から地球上の各国政府宛の要望書を提出、グシオン等は受領する。アイーダ、ノレド、ラライヤが見学し、記憶を取り戻したラライヤは交渉団3名の名前を語る。彼女はトワサンガの別の軍に居たという。クンパは部隊を補強するのでドレット将軍をザンクト・ポルトから離れた場所での戦闘で叩けとマスクに指示する。マスクはトワサンガ艦隊の混乱と陽動を狙って、投降すれば地球居住権を与える旨の通信筒をドレット艦隊の旗艦に撃ち込み、直後にガランデンを月へ向けて発進させる。サラマンドラとメガファウナがそれに続く。ドレット艦隊のMS部隊はしばらく追撃したが、その中の1名リンゴ・ロン・ジャマノッタは投降してベルリに捕えられる。
ドレット艦隊のマッシュナー・ヒュームは地球艦はトワサンガ本国で拿捕が可能。自分達は増援部隊と共に次の「レコンギスタ作戦」を遂行するのだと語った。そのマッシュナーの艦クノッソスより支援機アリンカト2機に分乗したロックパイ・ゲティのMS小隊がメガファウナ・サラマンドラの撃沈を狙い発進する。クリム等はMS隊で応戦出撃し、メガファウナは網によるバリアの敷設を行う一方、G-セルフにアサルトパックを装備させ出撃させる。ベルリがG-セルフ単独でロックパイ等をほぼ無力化し、撤退を始めさせた後、クリム等が逆追撃して撃退に成功する。この間ラライヤもリンゴの乗機だったモランを操り自らメガファウナを防衛した。
メガファウナとサラマンドラはトワサンガの宙域に達し、ラライヤの水先案内でシラノ-5のサウスリングに寄航する。コロニー内部へ進入直後、クリム等はMSザックスに乗る本国守備隊のガヴァン・マグダラに取り押さえられてしまう。ラライヤ、ベルリ、アイーダ、ドニエル、ケルベス等は無事守備隊の目を逃れ、ラライヤの故郷の街郊外のモライの林に着く。ラライヤの隣人でレジスタンスのフラミニア・カッレ等が迎える。フラミニアはベルリとアイーダの姿に驚き、引き合わせたい人物がいると語る。
ベルリ達はフラミニアにレジスタンスのリーダーロルッカ・ビスケスの家に案内され、ロルッカとミラジ・バルバロスに会う。二人はベルリとアイーダを「レイハントン家の皇子、皇女」と呼び、2人の生家であるレイハントン家の屋敷へと案内する。アイーダは屋敷の子供部屋で実の両親の写真を見つけ涙する。ロルッカとミラジはベルリとアイーダが実の姉弟であること、幼い頃にピアニ・カルータ大尉により地球へ亡命させられ、捨て子として処理されたこと、G-セルフは「YG-111」という制式名でロルッカ達がドレット軍用に製造し、事前偵察用機として採用されたこと、採用決定後にレイハントン家の遺伝形質を持った人間だけを生体認証するレイハントン・コードを追加実装したことなどを明かす。アイーダはロルッカとミラジに対し怒り、今後は自身で行動目的を決めていくと宣言する。
トワサンガの政権と軍部はクリム・ニックがアメリア大統領の息子であることを知り、クリムを国賓待遇に変更し、サラマンドラをセンターリングへ迎え歓待した。また遅れて到着するアーミィのガランデンも歓迎しようとする。クンパやマスク、クリムもトワサンガの軍事力を取り込みたい意図で共通している。ベルリは周囲の制止を無視し、G-セルフ単独で接近中のガランデンへ意図確認に出向くが、ガヴァンのMS隊に発見される。ガヴァンはラライヤが帰還したものと思い問いかける。ベルリは応答できず怪しまれ、G-セルフはネットで捕縛され爆破されそうになる。ベルリは必死でネットから逃れ、ザックス数機を傷つけ撤退させる。ガヴァンはG-セルフの想定外の性能に驚く。
サウスリングの農業ブロックの外壁がメンテナンス不良から剥がれ、大量の瓦礫や土砂が宇宙に流出した。アイーダの判断で、メガファウナはロルッカ、ミラジ、フラミニア等を乗せたまま出航し、瓦礫回収作業を手伝う。ドレット軍はG-セルフをアーミィ側に奪取したいクンパに実験機のMSビフロンを供与した。バララがビフロンの試運転に出かけ、マスクも付き添う。クリムは警戒してミックと共にマスク達を追う。ラライヤはレジスタンスから贈られたMSネオドゥで瓦礫撤去に向かおうとしたが、予期しない挙動により制御を失い、ビフロンと接触してしまい小競り合いとなる。これを発端にメガファウナのMS隊、ガランデンのMS隊、サラマンドラのMS隊は地球人同士で三つ巴の戦闘を始めた。そこにロックパイらトワサンガのMS隊が到着し、停戦し瓦礫撤去作業を行えと指示する。ロックパイはシラノ-5へ寄航中のヘルメス財団の艦艇カシーバ・ミコシやクレッセント・シップの機嫌を損ねる行為はトワサンガと地球のエネルギー供給が絶たれる危険を孕むと解説する。ベルリが先陣を切って瓦礫撤去作業を開始し、他の地球勢も競うように撤去作業を始めた。
その最中、クンパはガランデンのランチでメガファウナに接舷して潜入しロルッカと会話する。クンパ・ルシータの本名は「ピアニ・カルータ」といい、かつてベルリとアイーダを地球に亡命させたトワサンガ人だった。クンパは政争の火種となるベルリとアイーダを再度呼び寄せたロルッカを非難し、ロルッカは地球の急激な技術進歩はクンパの所業だろうと非難する。クンパはアイーダにも見つかり、メガファウナから去る。
アイーダは自分の役割について悩んだ後、生家とドレット家との争いの元となったヘルメス財団本拠地、金星軌道上にあるとされるスペースコロニー群であるビーナス・グロゥブを自身の目で確認したいと言い出す。G-セルフ奪取を狙い攻撃を仕掛けてくるトワサンガ軍、アーミィの追っ手から逃れるにも好都合なビーナス・グロゥブへ戻るクレッセント・シップへ逃げ込む計画を立てて実行に移す。
メガファウナは安全のためカシーバ・ミコシを背にした近傍の宙域に停泊していたが、各々異なる思惑からG-セルフの奪取を狙うマスク、ガヴァン、ロックパイ、クリムのMS隊が来襲する。マニィはマスクのメガファウナへの潜入を手伝ったが、直後にMS戦が始まり、メガファウナの艦内に取り残される。メガファウナはクレッセント・シップに向けて発進し、G-セルフがMS隊を引きつけている間にクレッセント・シップ内側へ無事到着する。ベルリのG-セルフはロックパイのMSガイトラッシュの猛攻を受けるが、ビームマント発生器を破壊して辛くも撃退する。その後ベルリの持っていたGメタルを鍵としてクレッセント・シップのエンジン起動が促進され、ビーナス・グロゥブへ向けて出航する。クレッセント・シップのエンジンルームには、レイハントン家の紋章があり、ベルリはこの部屋でアイーダと共に亡き父母への思いを馳せ、自身を取り戻していった。
クレッセント・シップ艦長のエル・カインドは、「アグテックのタブー」で地球に高度な技術の開発や利用を禁止してきた理由を、かつての人類が大量消費と戦争で地球を住めなくしたからであると説明した。その代償としてヘルメス財団はエネルギー源のフォトン・バッテリーを無償で地球圏に供給を続けてきたとも解説する。アイーダはエネルギーの独占は悪であるとの自分の思想はアメリアで周囲から教えこまれたもので自身での判断ではなかったことに気づく。ベルリからの地球圏での戦争状態を止めて欲しいという願いや、カインドからの助言を受け、アイーダはグロゥブを治めるラ・グー総裁に会うことを決める。
ビーナス・グロゥブが間近となった頃、「ジット団」と名乗るMS隊が出迎えの名目でクレッセント・シップに降り立つ。だが彼等は武力で船を占拠。呼応してフラミニアと助手のヤーンはG-セルフを強奪しようとする。二人もジット団のスパイだった。止めようとしたベルリは麻酔で眠らされ、メガファウナのクルーたちは全員軟禁、クレッセント・シップのクルーも人質にされてしまう。
ジット団はキア・ムベッキをリーダーとする地球へのレコンギスタを主目的とするビーナス・グロゥブ内の新勢力だった。またトワサンガのハザム政権とも協力関係を結んでいた。ジット団はクレッセント・シップの針路を彼らの基地ジット・ラボラトリィへ変更させたが、ビーナス・グロゥブの警察テン・ポリスのMS隊に見つかり咎められた。キアと部下達はテン・ポリス撃退のためMSで出撃する。この隙を突きメガファウナはクレッセントシップから脱出する。ベルリはG-セルフをフラミニア等から取り返し、キアのMS隊と対峙する。予想外の性能を示したG-セルフにキアは興味を抱き、鹵獲しようとMSジャイオーンで執拗にG-セルフを追撃するが、ジャイオーンのビームサーベル攻撃がコロニーの海洋を構成するシー・デスクに大穴を開けてしまう。とめどなく流れ出る大量の海水を前にキアは狼狽する。穴に飛び込んだジャイオーンをベルリが追い、キアの部下のMSも続く。
一方メガファウナはジット・ラボでアイーダ、ラライヤ、ノレド、マニィ、リンゴ、ケルベス等を降ろした後、首都ロザリオ・テンへと向かった。マニィとノレドはジット・ラボでMSG-ルシファーを鹵獲する。キアはラボから組み立途中の大型MAコンキュデベヌスを持ち出し、ジャイオーンとドッキングして再度ベルリに挑むが、海水流出による環境破壊の進行を看過ごせず、戦闘を中断して、コンキュデベヌスの機体で穴を塞ごうと自沈させる。部下のクン・スーンはキアを助けようとMAジロッドで後を追ったが、救助を拒むキアはレコンギスタの完遂を部下に託して浸水する機体と運命を共にした。悔しさを噛みしめクンはボッドで脱出する。2機のMAによって海底の穴は塞がれた。ベルリたちはロザリオ・テンに集合し、若々しい容姿のラ・グー総裁と面会する。ラ・グーは一行を歓待しつつ、ジット団を止められなかった管理不行き届きなどを詫び、長い年月で人心が変わってきている事、ビーナス・グロゥブで発生する「ムタチオン(突然変異)」への絶望からレコンギスタを望む層が生まれたのだと明かす。ラ・グーはムタチオンにより200年近く生きていると告げた。
メガファウナのクルーを招待しての昼食の後、ラ・グーはアイーダと改めて面談する。フォトン・バッテリーの集合体であるビーナス・グロゥブは、地球圏が真に枯渇する将来が訪れた時に、地球を丸ごと隣の若い銀河に移動させるための物で、それを実現するには球全体をフォトン・バッテリーで充たした状態の物が、あと3つは必要とラ・グーは語る。
だが、その高い理想のために集ったビーナス・グロゥブの民であっても、たった数百年で当初の理想の忘れ、困難に絶望し、ピアニ・カルータやジット団のような地球へ戻ろうとする勢力を生んでしまったこと。それらを鑑みてより一層、高度な技術は地球圏の人々からは隠匿すべきだと考えてきたのだと語る。アイーダは絶望の理由を問う。ラ・グーは身体劣化の病「ムタチオン」の実情をラ・グー自身の身体でアイーダに見せる。アイーダは驚愕しつつその姿を受け止め、正しい人の在り方についてより深く考えていく。
ジット団はキア・ムベッキを弔いつつレコンギスタ作戦を発動、制止するテン・ポリスをフルムーン・シップからのビーム射撃やクンの新MSマズラスター他のMS隊での攻撃で実力で排除して、地球へと出発する。それを追ってクレッセント・シップとメガファウナも、ジット・ラボの新武装、新MS・新MAを載せて地球へと出発する。ジット・ラボのエンジニア達や数名のテン・ポリスも旅に加わった。
地球周回軌道まで帰還したベルリ達はアーミィの基地になった第3ナットの偵察に向かうが、ベッカーのウーシァ部隊より攻撃を受ける。ベルリはビーナス・グロゥブで得た、これまでの6つのバックパックの機能をすべて包含するバックパック「パーフェクトパック」の独自武装フォトン・トルピードを試射して反撃した。たった一射で敵部隊を壊滅させたその威力にベルリは恐怖する。第3ナットに着いたベルリ達はアーミィの新造戦艦ブルジンを見る。ベルリはウィルミットと久々に対面する。ジュガンとクンパはベルリ等に、ドレット軍がカシーバ・ミコシを占拠しゲル法皇を人質にした事件が起きたこと、それをマスクが解放したことなどを解説する。トワサンガで歩み寄りを見せたアーミィとドレット軍は決裂していた。ジュガンは紛争勝利のため、G-セルフをアーミィ戦力に組み込み、アイーダは人質にすると述べるが、ベルリ等はウィルミットの反対を傘にして第3ナットを脱出する。ベルリは職務のみに没頭し、息子の動静に無頓着なウィルミットに落胆して愚痴をこぼすが、アイーダらに励まされ、ベルリも誇りに思える母だと気を取り直す。ビーナス・グロゥブまでベルリらに同行していたマニィは、ジット・ラボから入手したMAジーラッハでメガファウナを離れ、ガランデンへ帰投、マスクと再会する。
ベルリ達はアメリア艦隊のグシオン総監を訪ねる。グシオンもまた、メガファウナとG-セルフとをアメリア軍へ編入し、自戦力として使いたい意向を示すが、ベルリは地球の誰かの命令で戦うのは嫌だと述べ、アイーダとノレドはそれがメガファウナの総意だと補足する。アイーダはグシオンに育ててくれた感謝を伝え、出来ることは協力はするが、メガファウナは独自に地球圏の争乱の収拾のため行動すると伝え、軍編入を固辞した。
アーミィのベッカーのウーシァ部隊と、ドレット軍のロックパイが駆るガイドラッシュ率いる部隊の交戦にベルリらは遭遇する。それを止めようと、その戦場の中心となっていたガイドラッシュを、パーフェクトパックの力を駆使して撃墜するベルリ。パーフェクトパックの絶大な力を扱う者としての責任を抱え込みすぎるベルリを、G-ルシファーを操縦するラライヤとノレドは叱ってみせた。
各勢力が最終決戦に向けて準備を整える。アメリア軍のクリムにはジット・ラボ製の強襲MSダハックをコアユニットとする新型MAダーマ、ミックにも同じくジット・ラボ製の新型MSトリニティが、ロルッカとミラジの手によって渡る。アーミィのマスク部隊はジット団のフルムーン・シップと接触、ジット団もレコンギスタを円滑に進めるため、互いの利害が一致し同盟を組む。マニィはマスクにベルリと友達になって欲しいと懇願するが、ベルリはレイハントン家の子供だったとの説明に、マスクはより一層ベルリを生まれながらの権力者で“独裁者”に成りかねない危険な存在だと、警戒と敵意とを強めてしまう。マニィは説得を諦め、ルインのために共にベルリと戦うことを決意する。
アメリア軍のグシオンは、クリムに反対されるも、事態の更なる悪化を防ぐため、ドレット軍との休戦協定の会合を開こうとしていた。帰還したマニィにマスクの横を譲ったバララは表面上は潔く冷静さを装うも、ジット団から提供されたMAユグドラシルで出撃し、その鬱憤をぶつけるかの如く、凄まじい火力で休戦協定の会合を開こうとしていたアメリア艦隊とドレット艦隊を壊滅させ、ドレット軍の旗艦ギニアビザウにいたドレット、アメリア軍の旗艦ラトルパイソンにいたグシオンも命を落とす。多くの命を奪うユグドラシルを阻止せんとメガファウナも参戦、アイーダは新装備を施したG-アルケイン フルドレスで出撃する。G-ルシファーとG-アルケイン フルドレスが活路を拓き、G-セルフ パーフェクトパックが懐に入り込む、三機の連携による活躍でユグドラシルは撃破された。撃破後、休戦を信じていた父の死に悲嘆に暮れるアイーダを見て、ユグドラシルのような大量破壊兵器を戦場に送り込むマスクの存在を危険視するベルリであった。
マスクが駆るジット団より譲渡された最新型のG系統MS「カバカーリー」によって、唯一生き残っていたマッシュナーの艦も撃沈されたことでドレット軍は壊滅。戦場に残ったのはアーミィとジット団の連合軍、グシオンに代わってクリムが率いるアメリア軍、その争いを止めようとするベルリらメガファウナの海賊部隊の三勢力となった。最終決戦は大気圏上層での戦いとなり、地球の重力に引かれ、戦いはより混戦の色合いを強める。ベルリのG-セルフもマスクのカバカーリーとマニィのジーラッハの襲撃を受ける。クリムらの母艦サラマンドラが艦の機能を過信しすぎて操艦を誤り大気圏突入を失敗する中、大気圏を無事突破した各勢力の兵士たちの眼前には、ギアナ高地の広大な大地が広がっていた。
そこに漁夫の利を得ようと、ズッキーニ大統領が派遣した新たなアメリア軍までが参戦。乱戦の中、クリムとミックはジット団のチッカラとクンと対決、死闘の末この勝負を制する。アーミィを指揮するジュガンや、このレコンギスタにまつわる争乱の根源を作った黒幕クンパはその戦火の最中で死亡する。戦いをやめさせようと戦場を駆けるベルリだったが、単機での大気圏突破と、ジット・ラボ製MSの想像以上の戦闘力にG-セルフの高圧縮バッテリーであってもエネルギーが底を尽きつつあった。その状況下で戦闘を沈静化させるためには、この戦場で一番大きなフォトン・エネルギーを持つ機体を撃墜することに尽力しようとフォトン・サーチャーを発動する。その反応の先にいたマスクが駆るカバカーリーと再び遭遇、決戦となる。壮絶な一騎討ちの末、G-セルフとカバカーリーは相討ちとなるも、パイロットのベルリとマスクは互いに無事生き残る。ラライヤたちメガファウナの海賊部隊の奮戦もあり、ようやく沈静化していく戦場。ベルリとマスクの決着を見届け、アイーダが停戦と負傷者らの救助を宣言、戦いは終結した。
その戦いからしばらくの時が流れ、ビーナス・グロゥブに帰る前に地球一周旅行をするクレッセント・シップとそれに同乗するアイーダらメガファウナの面々。それを遠くから見送るルインとマニィの姿もあった。それぞれが新たな道を見い出す中、ベルリは一人でクレッセント・シップから日本で降り、自身の目で本当の意味で世界を知るために、シャンクによる地球一周に旅立ち、富士山から世界へと駆け出していった。
リギルド・センチュリー(Regild Century)
『機動戦士ガンダム』などの物語の舞台であった「宇宙世紀」の後に制定された年号。略称は「R.C.」。「リギルド」は「再鍍金」の意味で、虚飾にまみれた大人たちの世界の鍍金を、若者たちが剥がして新たな世界を築いていくという含意からきている。
本作の物語は、改号から10世紀以上が経過し、宇宙世紀時代の記憶も薄れたR.C.1014年が舞台となる。宇宙世紀が何世紀まで続いたのかは不明だが、作中では「宇宙世紀を含めて2000年を越す歴史」がある旨の台詞がある。
R.C.の世界では、宇宙世紀時代の技術体系を進歩させることは「アグテックのタブー」として禁忌とされているが、あくまでそれ以上の技術の「進歩」が禁止されているのであって、在来の技術自体は存続し使用されている。
